地獄の「66」を爆走だ! ハイウェイアクションゲーム『Scaravan 66』をプレイしながらアメリカの「魂の道路」ルート66を振り返る | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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地獄の「66」を爆走だ! ハイウェイアクションゲーム『Scaravan 66』をプレイしながらアメリカの「魂の道路」ルート66を振り返る

アメリカの歴史が息づくハイウェイ、魂の道路「ルート66」とは一体何なのか?

連載・特集 プレイレポート
地獄の「66」を爆走だ! ハイウェイアクションゲーム『Scaravan 66』をプレイしながらアメリカの「魂の道路」ルート66を振り返る
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来たる2025年7月17日、Lithic Entertainmentはハイウェイカーアクションゲーム『Scaravan 66』の早期アクセスを開始します。

これは、ルート66に永久に縛られた反逆のグリーサー「Lucky」になって、ルート66上の悪霊を退治するという内容。車に乗ったまま悪霊に銃撃するというスタイルの戦闘アクションゲームでもあります。

今回はこのゲームのデモ版をプレイレポ形式で紹介しつつ、同時に、アメリカ人の記憶に今も刻まれる「ルート66」について解説していきたいと思います。

ジョード一家のルート66

66。この数字を聞いて「荒野のど真ん中を貫くハイウェイ」を想像できる人は、間違いなくアメリカ人かアメリカの文化が大好きな人のどちらかです。

国道66号線、ルート66はまさに20世紀アメリカの姿を形付けた幹線と言えます。

ルート66の創設は1926年。カリフォルニア州サンタモニカとイリノイ州シカゴを接続する、全長3,700km以上の長大な道路です。西海岸から中西部やテキサス州を突き抜けて五大湖に至るこの幹線は、アメリカに好景気をもたらすと同時に様々な悲劇をも伝える役割を果たしました。

1930年代にかけて中西部を襲った「ダストボウル」は、中西部を南北に貫くグレートプレーンズで行われていた無計画な耕作がもたらした人災でした。草を剝がされて地表に露出した土が乾燥し、巨大な砂嵐を発生させます。これにより、グレートプレーンズ一帯は耕作どころか家に住み続けることさえも不可能なほどの状態に陥ってしまいました。

「カリフォルニアには数万の求人があるらしい。移住するなら今だ!」

このままでは餓死を待つしかない。しかし、カリフォルニア州の農園や工場は人手不足という。そんな噂を聞いた数十万にも及ぶ中西部の農民は、私財を売り払って一斉にカリフォルニアを目指しました。

その「ダストボウル難民」を題材にした『怒りの葡萄』(ジョン・スタインベック著)という文学作品が存在し、これは1940年にハリウッドで映画化されています。主演はヘンリー・フォンダ。本を読んで感銘を受けたフォンダが、この映画の主演を熱望して役を射止めたというエピソードがあります。

オクラホマ州の農家ジョード一家は、ダストボウルで大きな損害を被ります。そんな中、「カリフォルニアに行けば職を得られる」という噂話を聞き、全財産を売って中古車を購入します。ルート66に沿って、数千km先のカリフォルニアを目指すという旅に一家全員で出発したのです。

死人も出るほどの過酷な旅の末、ジョード一家はついにカリフォルニアに到着します。しかし、当時のカリフォルニアは噂を頼りに押し寄せた難民で溢れかえり、雇用情勢は完全に求職者過多の状態。ジョード一家は職を得ることができず―—というあらすじです。

ヒッピーが西からやって来た!

ダストボウル騒動から30年後、今度はカリフォルニアからルート66に乗って東を目指す人々が出現しました。

1960年代終わり頃から70年代にかけて、アメリカでは反体制を叫ぶ若者が一つの政治的ムーブメントを起こしました。「ヒッピー・ムーブメント」です。この時代のアメリカはベトナム戦争の泥沼に足を取られ、打開策を全く見出せない状態に陥っていました。

にもかかわらず、若者に対して容赦なく徴兵カードを郵送します。どうして俺たちが無能な連邦政府のために死ななきゃいけないんだ!? プロボクシングの世界チャンピオンだったモハメド・アリが先陣を切った徴兵拒否の波は、全米の若者に伝達していきました。

戦争に夢中の連邦政府に対抗するには、それまで「絶対的に正しい」と教えられてきたピューリタリズム的価値観を真っ向から否定する必要があります。若者たちは大人から「労働者のだらしない服装」とされていたジーンズを履き、ボロボロの中古車に何人も乗り合わせてルート66に繰り出しました。平和を訴える旅に出たのです。

反体制を志し、「真のアメリカ」に出会うことを夢見る2人の若者がバイクに乗ってルート66を旅する映画『イージー・ライダー』は、当時のヒッピー文化を象徴する作品です。なお、この映画の制作を主導し、主役も務めたピーター・フォンダはヘンリー・フォンダの息子に当たります。

ゲーム産業はヒッピーたちが作った

現代のゲーム産業を創成したアタリという会社があります。ノーラン・ブッシュネルが創業したこの企業は、ルート66を爆走していたヒッピーたちが集まってできた会社と言えます。

社長のブッシュネル以下正社員からアルバイトに至るまでジーパンにTシャツ姿で、アーケードの筐体を作る作業場でマリファナを吸いながらロックを大音量で流していたとのこと。その中にはAppleの創業者スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックもいました。

ゲームの古典としてお馴染みの『Pong』や『ブレイクアウト』は、まさに「ヒッピーが作ったゲーム」といっても過言ではないはずです。

さて、これらを踏まえて改めて『Scaravan 66』について見てみます。本作で描かれている「ルート66」は、アメ車独特の豪快なエンジン音と絶え間ない発砲音が鳴り響くクレイジーハイウェイ。とにかくゲームの展開が早く、1秒たりとも気が抜けません。この緊張感、このスピード感は大げさかもしれませんがしかし、まんざらフィクションではないかもしれません。

というのも1930年代、とあるカップルが各地で強盗を繰り返しながらフォードV8に乗ってルート66沿いを逃亡して回る……という事件が起こりました。ボニー・パーカーとクライド・バロウです。世界恐慌の只中、大金持ちを相手に豪快な強盗劇を繰り広げるボニー&クライドは、資本家に一矢報いる義賊として大衆からもてはやされました。

ボニー&クライドは、州境での犯行を好みました。この時代、隣の州に逃げ込むと警察はそれ以上の追跡ができなくなるからです。しかし、犯罪者の末路はいつの時代も悲惨なもの。結局彼らは逃亡ルートを予測した警察の待ち伏せ攻撃に遭い、100発以上の弾丸を撃ち込まれるという最期を迎えます。

ちなみに、このカップルの劇的な生涯は、1967年に『俺達に明日はない』という映画になりました。

ボサッとしている暇もないスピード感!

モリモリのスピード感のせいで、いいスクショが撮れないのはご容赦ください。

『Scaravan 66』は、コントローラーによるプレイが推奨されていますが、もちろんキーボードでも問題なくプレイ可能。実際の操作としては「左右移動」と「加速」のみで非常にシンプルで、あとは銃の照準を定めて撃つべし撃つべし。とにかく展開がスピーディなので、とっさの操作入力が大事になってきます。

自分も相手も猛スピードでキビキビとハンドルを切るので、何度も衝突していつの間にかダメージが蓄積して行動不能に……という事態に陥ってしまいます。ハンドガン、ショットガン、機関銃を状況に応じて切り替えるがのミソ……と言いたいんですが、「え~と、どの武器にしようかな?」とボサボサしてる時間はありません! このゲームでは、瞬時の判断力も要求されます。

てか、ボニー&クライドはリアルにこんなことやってたんだよな……?

操作はキーボードの場合は、左右移動&加減速をWASD、敵ロックオンをShiftキー、武器選択をXキー、そして発砲等のアクションや銃の照準をマウスで行います。とりあえずこれらだけでも覚えれば、Luckyと彼女の車を動かすことができます。クラッチだのギアチェンジだのといった複雑な操作の概念はありません。

本作はレーシングゲームではなく、あくまでも「迫りくる敵を銃で撃退する内容であること」に注意が必要です。敵がこちらに体当たりをかましてくるということは、ぶつけられないよう敵との適切な距離が求められます。急に幅寄せしてくる煽り運転の車に対処するのと同じで、ステアリングの左右操作と減速で上手く立ち回りましょう。

実際にプレイして面白いのは、本作の攻略には、加速一辺倒ではなく、時には減速も絡めて、どちらも使い分けることが肝心ということ。めんどくさい時は加速のWキーとマウスの右クリックを組み合わせて横から体当たり! もできるのですが……意外とこれが難しい!

何しろ猛スピードで走行している最中の体当たりですから、焦っているとなかなか当たりません。だからこそ、それが見事に決まった時は爽快の一言! 敵の車が鉄の塊になって「ゴトン!」と転がる場面も、迫力ある効果音と相まってプレイヤーに「破壊の快感」を与えてくれます。

他にも面白いのが、敵の攻撃方法です。荷台を牽引している車やピックアップトラックは、道中に爆弾を落としてきます。特に厄介なのはピックアップトラックで、こいつは横に並ぶと体当たり攻撃もかましてきます。う~ん、何だかマ◯オカートっぽい!

ここでは何でも売ってるぞ!

戦いの中で消耗したり、武器を買い揃えたいというのであれば道中の分岐点に車を寄せ、ショップを利用しましょう。こんなクレイジーな道路にショップなんかあるのか? と思われそうですが、ルート66に売られていないものはありません。ある時は難民を、またある時は犯罪者の乗った車を東西に送り届けたルート66。全盛期には、道路利用者のための宿泊施設が沿線各地に設けられました。

『Scaravan 66』にも、そのような施設が登場します。ダイナーやキャンプ場、モーテル、バーガー屋などに寄り道して、装備やアイテムを整えるという概念が実装されています。

そう、ここはルート66。ドライバーには全ての自由が保障され、それを享受するためのアイテムは沿線の店舗で売られています。ルート66は、ある意味でアメリカ人が求めている「理想の社会」を体現していました。『Scaravan 66』はそんな往年のルート66を、過激な描写を加えながらも忠実に再現しているようです。

ただ気をつけたいのが、ルート66からショップに至る分岐の位置です。これはアメリカ人にとっては普通のことですが、道路の分岐は常に右側にあります。これ、普段左側通行の場所で運転する身にとってはなかなかのトラップでした。そのせいでショップに立ち寄る機会を逃してしまうということもあったり。

デモ版時点で結構むずかしい

本作には「弾切れ」という概念は存在せず、いくらでも好きなだけ発砲できるのですが……だからといって無双できるわけではありません。路上にいる車は、自分以外はみんな敵。5台がこちらの進路を妨害したり爆弾を投げたり並走して体当たりしてきたりで、こちらのライフがガシガシ削られていきます。

どこへ位置取りすればより有利に戦えるのかを瞬時に判断しなければなりませんが、先ほども言った通り日本の道路を走る感覚でこのゲームをプレイすると、うっかり右側分岐のショップを通り過ぎてしまう……。現実の道路と同じで、『Scaravan 66』のルート66は逆走できません。そこは反逆(?)して欲しかった!

最後に残念なのは、本作は記事執筆時点において日本語に対応していないということ。まあそもそもが操作の簡単なアクションゲームのため、英語は中学校で習う程度で十分とも感じています。チュートリアルも画面の右下に操作の図解が表示されるため、英語初心者であってもそこまでプレイに支障は生じないと思われます。

アメリカ史の潮流を感じさせるカーコンバットゲーム『Scaravan 66』は2025年7月17日に早期アクセス開始予定。現在はダウンロード無料のデモ版が配信されています。

ライター:澤田 真一,編集:麦秋

ライター/ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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編集/お空の人。 麦秋

普段は仕事であちこち渡り歩いては飛んでます。自分が提供するものが誰かのお役に立てれば幸い。皆さんのこくまろなキャラに並べるよう頑張ります。

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