『デモンズソウル』『ダークソウル』などのフロム・ソフトウェア製のアクションRPG、そしてそれらに追随する「ソウルライク」というジャンルは、ここ10年程度の非常に短期間で、ゲーム業界で大きな地位を獲得しました。『エルデンリング』が発売3週間で1,200万本、2025年4月時点で3,000万本売り上げているということで、ゲーマーにとっては定番ゲームといえる作品と言えるでしょう。
しかしその一方で、このジャンルに馴染めない人もいるはずで、筆者もそのうちのひとりです。筆者の距離感を説明しておくと、『ダークソウル3』と『SEKIRO』はある程度プレイ済み。スタミナ管理やパリィといった戦闘の駆け引き自体は素晴らしいと思いますが、雑魚戦や嫌らしい攻撃の敵などにはイライラし、プレイを断念してしまうといった具合です。そのため、『エルデンリング』は避けていた……といった具合です。
5月30日発売の『エルデンリング ナイトレイン』は筆者にとって、もしかしたらフロム・ソフトウェアの作品に馴染めるかもしれない……と感じた作品です。マルチプレイ重視である上、これまでとはゲームプレイサイクルが大きく異なるものになっていそうだったため、もしかすると筆者でも遊びやすく仕上がっているのではないかと期待していたのです。
本記事では、『エルデンリング ナイトレイン』をプレイした『ソウル』系苦手ゲーマーから見た“壁”と、プレイしつづけて見えてきた“可能性”を語ります。
ソウル系とは異なる喜びがあるデザイン

本作は、『エルデンリング』をベースにした3人協力型アクションRPGです。プレイヤーは防御力に長けた「守護者」や、獣に変身できる「執行者」などそれぞれ能力の異なるキャラクターを選び、「リムベルド」というやや広めの箱庭フィールドを冒険します。ゲームサイクルとして3日間に分かれており、最初の2日間はフィールドを探索して最後にはボスと戦闘、3日目は大ボスと戦うことになります。

RPG的な要素は比較的鳴りを潜めており、レベルアップは全ステータスが一律でアップするのみで、細かなステータス振りなどはありません。武器はハックアンドスラッシュのように宝箱などからランダムに入手できます。さまざまな武器を気軽に使えるので、いろいろな戦い方を楽しめるようになっています。

バトルロイヤルゲームのようにエリアが縮んでいくのが特徴で、ゆったり自分のペースでの探索はできません。その分、いかに限られた時間で進むべきルートを考え戦略的に成長していくかという楽しみがあります。いいアイテムが見つけやすい場所や、倒しやすいボスを見つけて経験値を稼いだりと有利に進められると嬉しい瞬間も多々あり、これまでの作品とは違う喜びをもたらしてくれます。

キャラクターの動きも全体的に軽快で、ジャンプして崖をよじ登ったり、左スティック押し込みで高速ダッシュしたりと、アクティブに動けます。落下ダメージもないため、探索において慎重さが求められる場面はほぼありません。戦闘においてもアルティメット技的な立ち位置の「アーツ」などが使用でき、より豊富で馴染みやすいキャラクター操作に仕上がっています。
初心者はヤケド必至?
全体的に軽快でこれまでとは違う体験をもたらしてくれますが、「協力プレイだから遊びやすいかもしれない」という気持ちで手を出すと、初心者はヤケドすること必至と言えるでしょう。というのも、本作は1回のプレイ時間が最後まで到達すると40分~50分ほどあり、構造的に「死」への代償が『ダークソウル』や『エルデンリング』よりも大きいのです。

本作の「死」の仕様を解説します。HPが0になると死ぬ前に一度瀕死状態になり、紫色のゲージが溜まります。それを味方が攻撃して0にすると復帰できますが、死ぬたびに紫ゲージは増えていき、最大3ゲージ目まで到達すると復帰させるのは非常に困難となります。

フィールド探索中は死んでもレベルを1失うだけで、死んだ地点に戻ってロストした経験値を回収すればすぐリカバリできます。3人同時に死んでもゲームオーバーにはなりません。しかし、1日の最後のボス戦で3人全員倒れるとゲームオーバーとなってしまいます。

『エルデンリング』や旧来のソウル系であれば、ボス付近の祝福(篝火)から復活して再挑戦できましたが、本作では1試合が長く、得た装備もロストしてしまいます。単純に難易度も高く、かなりモーションを覚えることが求められるボスが続きます。過去作はそれを学び、何度も連続してトライするということができましたが、今作はそうもいきません。特に最後のボスで死ぬとやり直しの幅も大きく、死ぬことはより避けるべきことになっているのです。


仲間も一緒にやり直しになってしまうというプレッシャーもあり、1試合でかなり疲弊する体験となっています。決して不出来というわけではありませんが、それはあまりにも尖りすぎていて、独特すぎる体験になっているのです。

狂気などの状態異常やガードカウンターといった少し特殊なアクションといった『エルデンリング』の基本要素の説明はすべて拠点にある「図録」という場所の手引書・指南書に格納されており、はじめに自分で探して読まなければなりません。
初心者はどう向き合うべきか?
プレイして改めて感じたのは、本作はマルチプレイ拡張のようなプレイ感であるという点です。批評家とユーザーが共に指摘していることですが、本作は『エルデンリング』をクリアした“エルデの王”が3人揃わなければ、最初のボスですら突破が困難を極めるくらいの高難度です。『エルデンリング』とはまったく違う体験ではありますが、同作の知識はベースとして持っておくことが推奨されているように感じられ、初心者が「マルチプレイなら始めやすそう」という理由で手を出すには過酷といえるでしょう。
本作は独立した新作として発売されているほか、事前情報ではこれほど難しすぎるという印象はなかったので、筆者のような初心者でも飛びつきうるものだと思います。しかし、『エルデンリング』を少なくともクリアまでプレイしていることが前提すぎるデザインに感じられ、筆者にはミスマッチだったと感じます。
15時間プレイで見えてきた光
ただ、15時間ほどプレイしていると“光”も見えてきました。本作にはプレイで獲得できる「遺物」というアイテムがあり、これを選んでセットすることでパッシブバフがつきます。組み合わせによってはキャラクターの強みを存分に活かしたり、周りの味方にもポジティブな効果をもたらしたりと有利にはたらくため、攻略法を覚えていくと同時に強くなれます。
最初の10時間はボス戦の難しさや要素の説明の少なさにいっぱいいっぱいでしたが、時間をかけるほど先述した倒しやすいボスの場所把握や最適ルートの模索などがスムーズにできるようになってきますし、武器のルートみんなで攻略するというマルチプレイの楽しさもこの時間をかけることで味わえるようになってきました。
初心者から見ると最初の10時間は「鍛錬」のように感じられるほど高い壁ですが、なんどもぶち当たっていくことで徐々に崩れていき、そのうち「あれ?思ったよりスムーズにいけるようになったな」と気づいた瞬間の達成感は大きいものでした。
フロム作品初心者が『The Duskbloods』に期待したいこと
筆者はPvPvEジャンルが好きなため、『The Duskbloods』にはフロム作品だから、というよりこのジャンルに新しい作品がやってきた!という視点から楽しみにしています。同作はマルチプレイを主軸にしているという点では『ナイトレイン』と同じですが、メインクリエイターが宮崎英高氏であるというのは大きな差と言えます。PvPvEは物語性が薄くなりがちなほか、シューターが採用されがちなので、フロム・ソフトウェアがこれらの視点で何かしら新しい体験をもたらしてくれるのは間違いないでしょう。
任天堂ハードでのフロム・ソフトウェア作品は『ダークソウル リマスター』以来ですから、.あまり馴染みがない新規プレイヤーも増えるはずです。こちらは完全新作ですし、ここから入るユーザーにとっても馴染めるような作品となることに期待します。
なおGame*SparkのYouTubeチャンネルでは、メタスコアの評価を眺めながら経験者と初心者の2視点で本作を語る動画をアップしています。ぜひご覧ください。