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Game*Sparkレビュー:『Spirit of the North 2』オープンワールドの北欧世界を冒険するキツネADV続編─前作の不満点が解消され、あらゆる要素が進化した傑作

新たな仲間のカラスと共に美しいオープンワールドを旅しよう。

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Game*Sparkレビュー:『Spirit of the North 2』オープンワールドの北欧世界を冒険するキツネADV続編─前作の不満点が解消され、あらゆる要素が進化した傑作
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2020年5月8日PC(Steam)向けに『Spirit of the North』というゲームが発売されました。当時、世界中を襲ったコロナ禍により、社会が急速な閉塞感に包まれていたことも記憶に新しいと思います。

本作品は、アイスランドの風景にインスパイアされた美しく幻想的な世界を「アカギツネ」となって探索し、謎を解きながら冒険する、ウォーキングシミュレーターに近い非言語的なゲームです。アカギツネの可愛さや、息を呑む数々の景色、壮大な音楽など、世界情勢に不安を覚えていた筆者の心を癒やしてくれる大切な作品でした。

しかし、純粋に一つのアドベンチャーゲームとして見ると、操作性の悪さ、マップやガイド不在などの不親切な設計、フィールド探索の面白みの無さ、何を伝えたいのか不明瞭なストーリー、といった具合に改善するべき不満点や欠点も多く見られる非常に惜しい作品でもありました

ということで今回は、2025年5月8日PC(SteamEpic Gamesストア)/PS5Xbox Series X|S向けにリリースされた続編『Spirit of the North 2』のご紹介です。果たして、5年越しの新作はどんなゲームへ生まれ変わったのか。前作と比較しながらプレイ内容をレビューしたいと思います。

なお本稿はPC版での試遊となり、執筆にあたり開発元からSteamキーを提供いただいています。また、記事にはネタバレ内容が含まれているので、閲覧の際は十分注意してください。



野生のキツネとカラスが故郷を目指すオープンワールド冒険譚

古びた伝承を紐解き、世界を浄化する旅路へ

ここでは、まず簡単に『Spirit of the North 2』の概要をそれぞれ見ていきましょう。本作は、3人称視点のオープンワールドアドベンチャーゲームです。プレイヤーは荒野に生きるアカギツネとなり、パートナーの「カラス」と共に広大なフィールドを探索して大いなる謎を解き明かし、帰るべき故郷を目指していきます。

前作と違い物語の全体像が明かされていく

いにしえの時代、「エオナ」という一頭のキツネが海をわたり、フォックスアイランドへ来ました。エオナは空の彼方をあざやかに彩る光のカーテンから現れ、“最後のオーロラの民”としてこの地に定住。

伝承の言葉によると、すべての母たるエオナには数多くの子供たちがいました。それらはキツネの部族、熊の部族、雄羊の部族、狼の部族、牡鹿の部族、大ガラスの部族などにそれぞれ分かれ、数百年もの長い間平和に暮らしていたといいます。

そして、各部族には「ガーディアン」という精霊的な守護者がおり、彼らの放つ祝福の光りによって守られてきたのです。

しかし、その平穏も永遠ではありませんでした。ある時、熊の部族の「グリムニール」なる呪術師が部族間の和平を破り、侵略行動を開始。嫉妬と憎悪に駆られたグリムニールによって、ガーディアンの祝福の光が奪われてしまい、次々と力尽きていきます。

そしてキツネの部族だけが難を逃れ、島から遠く離れた場所に姿を消し二度と戻らなかった……というのが物語の本筋となります。プレイヤーの使命は、各地に散らばる失われたガーディアンの魂を見つけて浄化し、枯れ果てた世界をふたたび祝福の光に満ちたものに取り戻すことです。

前作において、ガーディアンの存在やグリムニールとの戦いの痕跡など、この世界に何が起きたのか、ほんのりと示される程度で明確に語られることはなく、それがユーザーからの不満点に挙げられていました。

しかし今作では、道中で入手可能な伝承メッセージに加え、美麗なカットシーンが挿入されており、不明瞭だったストーリーがより具体的に語られています。これによって物語へ感情移入しやすくなり没入感を高めています。

美しいロケーションの数々

このシリーズの特徴は「美しく幻想的な北欧の風景」にあります。前作のUnreal Engine 4を使用したグラフィックも素晴らしかったのですが、本作ではUnreal Engine 5に移行して制作され、さらにリッチで精密なグラフィックに進化していました。

遺跡の周辺にたたずむ湖、雪が覆う雪山、木々が茂る大森林…などなど、アイスランドがモチーフだという、多種多様なエリアが用意されており、その壮大な北欧世界の景色に圧倒されるでしょう。

ただ美しいだけでなく、闇に侵食され命枯れた洞窟や死体の転がる地下墓地、寺院の大広間といったどこか不気味な雰囲気の場所もあり、冒険にほどよい緊張感を与えていました。

広大なオープンワールドを探索

キツネを操作してオープンワールドを自由に駆け回るのも本作の魅力。筆者の体感でいうと、マップ面積は前作の約5~6倍はあったように感じました。基本的に行き止まりはなく、さまざまな地形とロケーションが繋がっていてエリアの隅々まで行くことができるので、その広さを実感できると思います。

プレイヤーの行く手を阻む謎解きや秘密も隠されています。謎解きの性質としては、複数のエリアを探索してキーとなるアイテムを手に入れ扉を開いたりするものや、光るオーブを発見して石像に嵌めていくものなど、フィールドを利用したダイナミックな仕様です。

前作と同じく、ほぼノーヒントで自力で謎を解いていかねばなりませんが、本作では壁画のヒントがあったり、フィールド内の動線がわかりやすくなった事もあって、そこまで難しいレベルではありません。きっと前作以上に快適に探索を楽しめると思います。

爽快なキツネアクション

愛らしいキツネを操作して自由にフィールドを駆けていくわけですが、ジャンプしたり走ったり「自分が動物になったような」アクションはそのままに、前作では多くの批判が集まっていた操作性の悪さもかなり改善されて快適になっていました

また、本作では聡明な相棒の「カラス」が登場します。彼は、遠くの足場に飛び移る時や、高所から飛び降りる時にキツネを掴んで運んでくれるなど、プレイヤーをサポートしてくれる頼りになる仲間です。この連携アクションがとても爽快で、フィールドを探索する際のダイナミズムにつながっていました。とくにボス戦では非常に役に立つ欠かせないものでした。

荘厳なアンビエントミュージック

もう一つ注目したいのは、作品を彩る幽玄なBGMです。ストリングスを使った物悲しさと、悠久な大自然と調和したようなアンビエントミュージックが荘厳さを演出しており、とても素晴らしかったです。このゲームの世界にずっと浸っていたいと思わせてくるような仕上がりで、没入感を高めてくれていました。

前作の問題点が改善され、あらゆるゲーム機能がスケールアップ

キツネのカスタマイズが可能に

さて、ここからは実際のゲームプレイを交えて前作から強化された要素や、新しい機能などを比較しながら見ていきましょう。

まず、本作ではなんと「キツネのカスタマイズ」機能が追加されました。体型や体重などのボディパーツから尻尾の形、やわらかさ、マズルの長さ、目の色、耳の大きさまで、自分好みに変更することが可能に。キツネが大好きなプレイヤーには垂涎の機能だと思います

もちろん、毛皮の色や質感もカスタマイズ可能になっており、フィールド内で見つかる宝箱から報酬として新しいファーを獲得することもできたりと、ちょっとしたお楽しみ要素となっています。

本編は、かつてエオナが降り立った安寧の楽園「フォックスアイランド」からスタートします。まわりをよく見てみると、可愛らしいキツネの立像があったのでXボタンで拾い、いかにもな台座に置いてみると石の扉が開いて通れるように。

本シリーズは基本的にこういった感じで、周辺の環境をよく観察して調べ、点と点をつなげていくようにクエストをクリアしていきます。簡単~やや頭を使うくらいのレベルで高難度ではないですが、非言語的なアプローチであるのと、ヒントが全くないことが前作の不満な点でした。しかし、今回はカラスの相棒が行くべき場所や、重要なアイテムが近い場合鳴き声で知らせてくれるので、だいぶ攻略しやすくなっていたのが印象的でした。

また、前作では操作などのチュートリアルは一切なく、すべて手探り状態の不親切な設計でしたが、本作から基本能力やルーンのアビリティを丁寧にガイドしてくれるようになっており、とても快適に遊べたのも良かった点です。

ただ、少し気になった変更点もありました。というのも、前作は落下ダメージが無かったのですが、今作ではしっかりとダメージ設定があり、高所から落ちると場合によってはゲームオーバーになります。

これはこれで、リアルさと緊張感のあるゲームプレイになって悪くはないと思いますが、崖の頂上からダイブしたりショートカットの抜け道を探してみたり、自由に探索する楽しさの妨げになっている気がしました。

通常のジャンプ、ランニングジャンプ、ダッシュなど基本アクションと新たに追加された「しゃがみ移動」「ターゲットジャンプ」を学びながら進んでいき、キツネの村に到着。

一番嬉しかった改善点は、フィールド内の探索が有意義でとても楽しくなったことです。前作におけるフィールドは、クエストの謎解きをするためだけに機能していて中身がスカスカで、探索する面白さと喜びが全く欠けていました。

対して本作は、壊せる壺や特殊アイテムの入った宝箱などが、フィールド内のあちこちに隠されています。だからこそ未知の発見を求めて、エリア内を隅々まで散策するのが楽しく、非常にやりがいを感じられました

そして本作からやっと「マップ」機能が登場します。オープンワールド系の作品において普通は実装済みですが、前作では存在せず多くのユーザーから不興を買っていました。

オベリスクはエリア内に点在している

マップは拡大縮小、目標地点へのマーカー設置など最低限の機能性ですが、シンプルで視認しやすくてグッド。フィールドにある「オベリスク」を稼働すれば、地図の範囲を広げることもできます。何より、マップが実装されるだけで探索するワクワク感が跳ね上がります

新しい要素として「ルーン装備」で、アビリティの強化が行えるようになりました。ルーンは、クエストを攻略するかボスを撃破すると手に入り、それらを装備すれば古代文字のような紋様が身体に刻まれ、プレイヤーに新たな力と能力をもたらしてくれます

たとえば、「伝承のルーン」はフィールド内の書物を感知したり、「グライダーのルーン」は先述したとおりキツネとカラスの連携アクションが行えるようになります。ほかにも突進や2段ジャンプが可能になるなど、ゲームプレイの幅がグッと広がります

ルーンは、「アライグマの商人」からも購入可能で、キツネの外見など役立つアイテムを販売してくれます。壺や宝箱で集めた光の欠片を通貨として使用するのですが、商人システムを導入したことで、フィールド探索に意味が生まれ、遊ぶ楽しさが倍増していたのは間違いありません

スキルツリー

忘れてはいけない新要素が「スキルツリー」です。スキルポイントを使い、体力、能力ゲージといったキツネの基本性能から、落下ダメージの軽減など獲得アビリティの強化までさまざまなスキルがアンロックできます。この要素のおかげで、ようやく普遍的なアドベンチャーゲームが持つエッセンスが備わったような気がします。

さて、島内の墳墓で見つけた「グリムニールの杖」を神聖な山頂へ持っていき浄化しようとしたところ、誤って落下してしまい、封印されていたグリムニール本人に杖がわたってしまう最悪の事態に……。

封印を解かれ、ふたたび憎悪の塊となって世界を焼き尽くしていくグリムニール。為す術なく追われ、フォックスアイランドから逃げ出すことになります。

そして……海に流されたどり着いたのが「ミストアイランド」という、薄い霧がただよう見知らぬ土地。ここから、グリムニールを倒すための冒険がふたたび始まります。

クエストを突破すると、最後は闇落ちした各部族のガーディアンを浄化するため戦うことになります。前作では戦闘パートは存在しなかったのですが、本作では導入されており、なかなか歯ごたえがありました。

戦闘方法もガーディアンによってさまざま。基本的には、ジャンプやグライドを上手く使って回避するのが主ですが、突進アビリティで攻撃したり、戦場にあるギミックを作動させ行動不能にしたり、かなり緊張感のある戦いが楽しめました

無事ガーディアンの浄化に成功するとカットシーンが流れます。闇落ちしたことを贖罪し、悲痛な表情で過去の出来事が語られていくのですが、説明する言葉やセリフなど一切ないにも関わらず、とても心に響いて感動的です。前作には無かった明確なストーリー描写が、ゲームの魅力をさらに引き出す劇的な変化をもたらしていました。

総評─ユーザーの期待に応える傑作に生まれ変わった

ここからは総評です。まず前作『Spirit of the North』では、ゲーム性の部分に難があるものの、アカギツネが美しい北欧世界を冒険していく世界観や設定自体が素晴らしく、作者の「こんなゲームが作りたいんだ!」という欲求と初期衝動がたくさん詰まった作品でした。それはそれで正しい創作の在り方であると思いますが、結果として多くのユーザーから粗さを指摘されることになります。

一転して本作においては、前作での反省とユーザーからの批判や要望を真摯に受け止め、ゲーム全体を丁寧に見直し、新たな要素の追加やゲーム性の改善が行われ、遊びやすさと楽しさに満ちていました。

そんな続編『Spirit of the North 2』は、より普遍的で高品質なオープンワールドアドベンチャーゲームに仕上がっており、どんなプレイヤーにも胸を張って本当にオススメできる作品です。ぜひ一度手にとってもらいたいと思います。


Game*Spark レビュー 『Spirit of the North 2』 Windows PC(Steam)/ PS5/Xbox Series X|S 2025年05月08日リリース

ゲーム全体のあらゆる要素が拡張/改善され、遊ぶ楽しさが劇的に増した傑作オープンワールドADV

GOOD

  • 有機的なフィールド探索/アビリティ要素
  • 幻想的で美しい大自然の風景
  • いにしえの伝承を紐解く心に残るストーリー
  • キツネとカラスのダイナミックな連携アクション

BAD

  • 最適化不足で動作が重くなる場面が多々ある(PC版)

ライター:DOOMKID,編集:H.Laameche

ライター/心霊系雑食ゲーマー DOOMKID

1986年1月、広島県生まれ。「怖いもの」の原体験は小学生の時に見ていた「あなたの知らない世界」や当時盛んに放映されていた心霊系番組。小学生時に「バイオハザード」「Dの食卓」、中学生時に「サイレントヒル」でホラーゲームの洗礼を受け、以後このジャンルの虜となる。京都の某大学に入学後、坂口安吾や中島らもにどっぷり影響を受け、無頼派作家を志し退廃的生活(ゲーム三昧)を送る。その後紆余曲折を経て地元にて就職し、積みゲーを崩したり映像制作、ビートメイクなど様々な活動を展開中。HIPHOPとローポリをこよなく愛する。

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