近年YouTubeをはじめとする動画投稿サイトでは、「心霊系コンテンツ」が国内外問わず盛んに投稿されています。幼少より心霊番組が大好きだった筆者にとって、手軽にこういった動画が楽しめるのは「いい時代になったもんだ」としみじみ思ってしまいます。
一口に「心霊系」と言っても、その形態やジャンルはさまざまです。その中でも、廃屋や廃墟などいわく付きの場所を探索し、邪悪な存在の姿を調査するいわゆる「ゴーストハンター」系のチャンネルは特に人気があります。ゲーム界隈においても、最近ではマルチ幽霊調査ホラー『Phasmophobia』が累計売上本数2,000万本を突破するなど、絶大な支持を集めています。
今回ご紹介するのは、そんな人気の「ゴーストハンター」を題材にした、シングルプレイ専用の探索ホラーゲーム『Ghost Frequency』です。果たしてどんな恐ろしい体験が待っているのか、プレイレポートをお届けします。
なお本稿は、開発元よりSteamキーの提供をいただいて執筆しています。また、ネタバレが含まれますので閲覧には注意してください。
『Ghost Frequency』とは
本作は、一人称視点でシングルプレイ専用のサイコロジカルホラーゲームです。プレイヤーは、PIT(超常現象調査チーム)の調査員となり、失踪し消息不明になった同僚を探すため、さまざまなツールを使用しながら、邪悪な存在が潜む廃屋を調査して真相を明らかにすることが目的です。


正直に言って『Phasmophobia』や『Ghost Watchers』 に比べると、世界観やゲーム性は控えめで地味な印象でした。しかし本作が特徴的なのは、リアルで本格的な幽霊調査を体験できることです。
本格的でリアルな幽霊調査ホラー
「EMFゴースト探知機」で異常現象を追跡し、「IRサーマルカメラ」で隠れた存在を見つけ、「EVPデジタルレコーダー」で不気味な声を記録して、邪悪な霊の正体を見つけ出す…といったように、実在するものに近い調査ツールを使って探索を進めるので、あたかも自分が実際の「ゴーストハンター」になった気分で臨場感のあるプレイを楽しめます。

『BrokenLore』のSerafini Productionsがパブリッシング
本作は、開発をPIT GAMESが、パブリッシングをSerafani Productionsが担当しています。Serafani Productionsは、オムニバス作品『BrokeLore』シリーズを筆頭に、質の高いホラーゲームを世に送り出している東京を拠点とするスタジオで、個人的に今最も注目すべきデベロッパーだと思います。
操作方法や対応言語について

操作方法は、キーボード&マウスおよびゲームパッドどちらにも対応しています。今回筆者はXboxコントローラーを使用してプレイしましたが、操作感は「最高に良かった」の一言です。
歩き回ることが主体のホラーゲームにおいて、操作の快適性はとてつもなく重要である、という持論が筆者にはありますが、その点で言えば、本作品はストレスがなく動き回れるうえに、画面の揺れ方など一人称視点を活かしたリアルな演出も自然で、圧倒的な没入感すらありました。ただし、少々3D酔いしやすいので注意してください。オプション設定で「頭の動き」をオフにすれば軽減されるでしょう。

また、日本語字幕にも対応しています。登場人物のセリフなど、日本語の表現は流暢で違和感なく、文句なしの出来栄え。そのほかのオプション設定は、グラフィックや音声に関するものしかなく、やや淡白な印象でした。
ゴーストハンターとなって幽霊屋敷を調査せよ!

ゲーム本編は、なんと実写風のムービーが流れてスタートします。この演出は、実際のゴーストハンター系Youtuberの動画を見ているようで、とても臨場感があり期待値も高まります。

エミリーとマークは、「P.I.T(Paranormal Investigation Team」という、イタリアのゴーストハンティングチームの一員。同じチームメイトのリサとベンが、古い廃屋の心霊調査中に失踪してしまった事から物語は動き出します。不安を抱えながらも、エミリーとマークの二人は友人の捜索を決意し、邪悪な存在が潜む廃屋へと足を踏みれていくことに……。


廃屋に入り、まずは1階を探索します。プレイ画面は、ハンディカム越しのようなデザインになっていて臨場感があります。次に何をするべきか行動目標も都度表示されるので、ゲームの進行で迷うことはなく、全体的にユーザーフレンドリーな設計でした。
基本操作は、左スティックで移動、RTボタンで走る、Aボタンで調べる、Xボタンで携帯電話を開く、といったシンプルなものです。

そして、調査にかかせないのが「ズーム」機能。カメラの画角を拡大/縮小して、隅々まで調べることができます。けれども、もし「何か」が突然フレームインしてきたら……と思うと恐ろしく、中々ズームする気になれません。

廃屋は真っ暗闇で手持ちのフラッシュライトだけが頼りです。非常に不気味な雰囲気ですが、廃墟にしてはそこまで荒れてはおらずどこか整然としています。


とはいえ、奇妙な絵画が飾られていることや、ベッドの下に無造作に転がるぬいぐるみなど、普通ではない空気が漂っているのもビンビン感じます。

現時点で特に失踪した二人の痕跡は発見できないので、今度はカメラの設置を行います。


適切な場所にカメラを置くため、Xボタンで携帯電話にアクセスし、「EMF検出器」というゴーストファインダーアプリを選びます。これを使えば、幽霊が潜んでいそうな電磁ストレスの高い場所が丸わかりになる便利なツールです。

各部屋をおそるおそる見て回り、電磁ストレスの高そうなところを探していきます。検出レベルは5段階あり、濃い緑→薄い緑→黄色→オレンジ→赤色の順に変化します。2箇所発見したら、1階部分のカメラ設置は完了です。

床が軋む音がし始めたと思って振り返ると、フレーム外から突如イスが目の前に飛んできたり、壁をコツコツ叩くや不快なノイズが聞こえてきたり……いわゆるポルターガイスト現象が頻発するので、ずっとビビリながらの探索でした。
幽霊屋敷を調査するという題材上、ジャンプスケアがあるのは当然です。本作はこの要素が全くチープではなく、出しどころのツボを抑えていて、効果的でしっかりと「怖い」演出になっていました。あまりにジャンプスケア盛り盛りだと、逆に全然恐怖を感じないのが不思議なところです。


そして、閉ざされていた2階へと足を踏み入れていきますが……。


1階と同様に複数の部屋があり、全体的にかなりの広さです。2階でもリサとベンの痕跡を探していきます。


すると、机の引き出しにリサの日記を発見。どうやら、彼女は探索中「冷たく不気味な感覚」に襲われたらしく、かなりの恐怖を感じたようです。そこで直感的に幽霊の存在を確信し、メインホールにマイクを設置し記録を試みたとのこと。


早速メインホールに向かうと、本当にレコーダーが残されています。再生してみると、リサとベンらしきうめき声が響き渡ります……!二人の身にとんでもない恐ろしい出来事が起こったのは間違いありません。

聞き終わった直後、なんと携帯電話にリサからのメールが届きます。一枚の写真が添付されているだけですが、何らかのメッセージでしょう。写真の風景を頼りに、その場所を探していくと……


写真と同じタンスを発見。中には書き残された日記と、ラジオが置いてあります。それによると、二人は廊下で不穏な足音を聞いたと主張し、地下室を探検する計画を立てていたようです。そこには、一体なにが潜んでいるのでしょうか。

そして今度は、「EVPレコーダー」を使用して二人の手がかりを探していきます。EVPは、通常では感知できない電子音声現象を記録してくれる調査ツールで、異常を感知すると波形が赤色に変わり、激しく乱れます。

部屋の一角でレコーダーが反応し、「ここから早く出してくれ!」とベンの助けを願う声が……!他の部屋では、リサの悲痛な叫びも記録されます。やはり、二人はどこかにある「地下室」にいる模様です。

新しい手がかりを追うため、次は「サーマルカメラ」を起動します。これは物体が発する赤外線を検知し、その温度分布を可視化するカメラで「サーモグラフィカメラ」とも呼ばれます。温度が高い部分は赤く、低い部分は青く表示されるのが特徴で、感染症対策や建築現場まで幅広く活用されています。

その性質を調査に応用し、床にサーマルカメラをかざしてみると…おそらくリサとベンのものと思われる足跡を次々と発見。それを辿って2階から1階へと進んでいきます。


足跡が途切れた先には、不気味な絵画のあった場所に着きます。そこを調べてみると、なんと「地下室」が現れます。果たして、この奥に失踪した二人はいるのか、そして無事生還できるのか──。プレイヤー自身の目で確かめて欲しいと思います。
本作は、ウォーキングシミュレーターに近い探索ホラーで、肝試しのようなハラハラした緊張感と、本格的な調査ツールを使用したリアルな「ゴーストハンター」を体験できます。クリア時間も2時間程度と、カジュアルかつ手軽に恐怖を味わえる良質なホラーゲームでした。
一方で、ゲーム性は乏しく、世界観も他作品と比較すれば地味な印象が強いため、ラストを除けば全体的に起伏の少ないプレイフィールだったのも事実です。しかし、値段を考慮すれば妥当だとも感じるので、一度手にとってみてはいかがでしょうか。

「幽霊調査ツール」は実在するのか?

さて最後に、ゲーム中に登場した数々の調査ツールは実在するのか?そして一体どんなモノなのかをご紹介します。
1.「EMFゴースト探知機」

ひとつ目は「EMFゴースト探知機」。ゲーム中では、電磁波の高い場所を検出して、異常な場所を探ることが可能です。
見た目は若干違いますが、これとほぼ同じ機能のツールが実際に販売されています。その名もズバリ「K-II Enterprises EMFメーター」というゴーストハンター御用達の調査デバイスです。
そもそも、EMFとは“electro magnetic flowmeter”のイニシャルで、電磁波を測定し、超常現象の可能性を調査するために使用されます。ゴーストハンターたちは、EMFメーターで電磁場が変動した際に、幽霊の存在や影響の可能性を推測し、幽霊の存在を追跡します。
この動画では、女性ハンターらが廃ホテルで「ウィジャボード」という、日本で言えばコックリさんに近い降霊術を行っている最中、実際にEMFが激しく反応しています。
2.「EVPデジタルレコーダー」

ふたつ目は、「EVPデジタルレコーダー」です。ゲームでは、周波数の分布を視覚的に表示するオーディオスペクトルで異常を検知し、通常では聞こえない不気味な霊の声を捕えることができます。
このレコーダーの元ネタは、「P-SB7 スピリットボックス」と呼ばれ、これも多くのゴーストハンターたちが愛用しています。超常現象調査や心霊調査で使用される霊とのコミュニケーションを試みるためのツールです。
より具体的にいうと、ラジオの周波数を高速で切り替えながら、ノイズに混ざって拾われるEVP(Electronic Voice Phenomenon、電子音声現象)が、霊の声だとされています。
アメリカ中西部のゴーストハンターチャンネル「Midwest Ghost Hunter」の動画では、心霊現象が多発する森林の遊歩道で、実際にスピリットボックスを使い幽霊と交信している様子が確認できます。ちなみに、筆者はこのチャンネルの大ファンで、かなりオススメのゴーストハンターです。
3.「赤外線サーマルカメラ」

最後は「サーマルカメラ」です。ゲームでは、リサとベンの手がかりを探すために使用し、赤外線の性質を利用して通常では見えない足跡を発見することができます。
¥34,539 (¥11,513 / 個)
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
似たようなデバイスとして、手持ち型のサーマルカメラが入手可能です。また、スマートフォン向けにもさまざまな類似アプリがリリースされているので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
実際にサーマルカメラを使って、ガチで恐ろしい現象を捉えたのがこの動画。ちなみに、「タケウチカメラ」という廃墟探索系のユーチューバーで、筆者のお気に入りです。
タイトル:『Ghost Frequency』
対応機種:Windows PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:Windows PC(Steam)
発売日:2025年5月26日
記事執筆時の著者プレイ時間:3時間
価格:700円
スパくんのひとこと
探索中のポルターガイスト現象がメッチャ怖くてビビリまくりだったスパ…!カジュアルにサクッと遊べる一方で、本格的な幽霊調査が楽しめたスパ!